福祉施設やパブリックスペース向けの製品や空間提案を行う「インフィルウェルネス」のWebサイトをご覧いただきありがとうございます。この「エシカルblog」では、「エシカル水栓」というインフィル独自の電気温水機能付き自動水栓製品を通じて、特別養護老人ホーム向けに少しでも施設の運営管理を楽にして、スタッフの方の働きやすい環境の実現に役立てればという思いから記事を掲載していきます。さて、温水器にはガス給湯器、石油給湯器、エコキュート、電気温水器などの種類があります。それぞれ特徴や利点に違いがあるので、対年数を迎えたとき、またはランニングコストを低く抑えるため、現在使用している温水器をそのままの方式にするか、他の温水器に変更するかお悩みの福祉施設の管理者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は“エシカル水栓”で採用している電気温水器の方式とガス給湯器や石油給湯器、エコキュートなどとの違い、さらに温水器の交換の目安についてご紹介します。
これまでの温水器を継続して使用するか、交換するかをご検討中の福祉施設の管理者の方に参考になれば幸いです。
そもそも電気温水器とは?
電気温水器とは文字通り電気の力でヒーターを熱して水を温める方式の温水器です。福祉施設の居室内で使用される電気温水器は、使用頻度や安全性、高い耐久性が求められるため強固な外装に耐久性の高い部品が使用されています。
それでは電気温水器のメリット、デメリットからご説明します。
電気温水器のメリット
電気温水器には次のようなメリットがあります。
・安全性が高い
まず、電気を使用して熱したヒーターでお湯を沸かす電気温水器は、ガスや石油給湯器と違い、燃焼系の機構を持たないため一酸化炭素や二酸化炭素を排出しません。そのため環境にやさしく換気が不要なうえ、ガスや燃料漏れなどの心配も無用です。
さらに火を使わないため、種火の点火・消火がないので火災が発生するリスクが少ないのも大きなメリットです。また煙や臭いも発生しないので福祉施設の居室内でも安心して使用できます。
・省スペースで設置が可能
他の温水器と比較すると電気温水器は省スペースで設置できます。
ガス給湯器の中でもプロパンガスを使うタイプはガスボンベの保管場所が必要になり、石油給湯器は灯油タンクを置くスペースが必要になります。
エコキュートはヒートポンプと貯湯タンクで構成され、ヒートポンプ用のスペースが必要になります。
電気温水器の中でも貯湯式はタンクを設置するスペースが必要ですが、上記の方式と比べれば省スペースで洗面台の下に設置が可能です。
さらに瞬間式電気温水器ならば、その貯湯タンクも必要ないので非常に設置面積を少なくできます。
・比較的に寿命が長い
電気温水器の耐用年数は約10〜15年です。
ガス給湯器、エコキュートの耐用年数は10年と言われているので、これらと比較して電気温水器は寿命が長いと言えます。
ガスや石油給湯器は、配管を直火で熱してお湯を沸かす仕組みのため、部品の劣化が早くなり寿命が短くなるようです。
・静かな動作音
電気温水器は電気でお湯を沸かすため、ガスや石油給湯器のような着火時の音や動作音がないため静かです。そのため福祉施設の居室内で使用しても気になりません。
・すぐにお湯が使える
ガスや石油給湯器は不完全燃焼をさけるため室外に設置しますので、給湯器から水栓まで距離があり適温のお湯が水栓にお湯が届くまでしばらく待たなければなりません。
しかし、電気温水器は洗面台の下に設置でき、温水器と水栓の距離が近いのですぐに適温のお湯が使えます。
電気温水器のデメリット
一方、電気温水器には次のようなデメリットがあります。
・水圧が低い
水道管から出る水の勢いと比べると、電気温水器の水圧は低くなってしまいます。
電気温水器の水圧は福祉施設の居室内での使用では許容範囲内と思われますが、もしご希望があればある程度の改善も可能です。 たとえば“エシカル水栓”の自動水栓をシングルレバー混合水栓へ変更することで水圧を上げることも。さらに電圧を200Vに変更することで“プラス15度”を保ったまま水圧を高めることなども可能です。
・湯切れする(貯湯式の場合)
貯湯式電気温水器は貯湯タンクにお湯を溜めるので、お湯を使い切ってしまうと湯切れしてしまいます。湯切れした時は再度、常温の水を沸かすためお湯が使えるまで時間がかかります。
ただし瞬間式電気温水器の場合は瞬時にお湯を沸かすため、お湯を貯湯タンクに溜める必要がないので湯切れは起きません。
エコキュートってどうだろう? 電気温水器との違い
エコキュートとは再生可能エネルギーを活用した給湯機のことで、エコという名前にも環境に優しそうな印象があります。またエコキュートは割安な夜間電力を使用してお湯を沸かすので、電気代も安くランニングコストが経済的な給湯機器と言われています。
エコキュートと電気温水器は、電気でお湯を沸かすという点では共通していますが仕組みに大きな違いがあります。
電気温水器は水を温めるための電熱ヒーターを使用していますが、エコキュートはヒーターを使わずヒートポンプ技術による大気中の熱を利用してお湯を沸かします。大気中の熱を利用するってちょっと想像できませんがどういう仕組みなのでしょうか?
大気中の空気の熱をヒートポンプユニット内の熱交換器の冷媒が取り込み、取り込まれた大気熱がヒートポンプ内の圧縮機によって高温になります。高温になった冷媒(CO₂)は、ヒートポンプ内の水側熱交換器で熱を水に伝えてお湯を作るという仕組みです。冷媒と圧縮機を使って温度を上げる点がユニークですね。沸かしたお湯は貯湯タンクに貯める点は貯湯型電気温水器と同じです。
エコキュートと電気温水器の違い
エコキュートは電気以外の力を使ってお湯を沸かすため、電気のみでお湯を沸かす電気温水器と比べると消費電力を少なくできるというメリットがあります。
その反面、単価が高く、初期の導入費用がかかること、比較的大きな設置スペースが必要なこと、お湯を作る夜間の動作音が気になるなどのデメリットがあります。加えて、貯湯タンクを使用するため飲用には不向きです。
導入費用はガスや石油などの他の方式に比べても数倍になります。電気温水器も導入コストが高いイメージがありますが、瞬間式電気温水器は単価が安いため導入費用を低く抑えることが可能です。
エコキュートも電気温水器も一酸化炭素、二酸化炭素を排出しないので環境に配慮した方式ですが、エコキュート方がヒートポンプで大気中の熱を使うのでさらに環境に優しくランニングコストもリーズナブルです。
エコキュートと電気温水器のどちらを導入するか考察中の方は、エコキュートは電気温水器よりも耐用年数が短いので、導入コストやランニングコストだけでなく、交換までの償却期間も計算に入れて検討する必要があります。さらに安全性、環境への配慮、設置スペースや騒音なども検討に入れて、それぞれの福祉施設によりマッチした温水器をお選びいただければと思います。
さらに瞬間式電気温水器を検討に加えていただければ、飲用可能や湯切れ問題解消などのメリットが追加され、貯湯式電気温水器に比べてランニングコストも抑えることができます。
残念ながら今回はここまでです。
次回は温水器の修理や交換の目安と、その際に日頃から相談できる専門会社を持つことの大切さをご紹介します。次回もご期待ください。
まとめ | それぞれの特徴やメリットを比べてみれば
今回は普段ご紹介する電気温水器以外のさまざまな方式を比べてそれぞれのメリット、デメリットをご紹介しました。最初の方にも触れましたが、福祉施設の居室内の水栓には何よりも安全性が求められ、比べてみれば瞬間式電気温水器は現場環境のニーズによく応えられている方式であると改めて気づかされます。
今後もそれぞれの製品の特徴やメリットをお伝えして、福祉施設をより良い環境にするためのお役に立てるように努めてまいります。次回は修理や交換が必要になってから専門会社を探すのではなく、普段から相談できる専門会社を確保しておくことも大切さをお伝えしたいと思います。それではまた、よろしくお願いいたします。
「インフィルウェルネス」とは?
住宅設備を軸としたソリューションプロバイダーの株式会社インフィルによる、福祉施設・パブリックスペースのための製品開発や空間提案を行うプロジェクトです。車椅子利用を前提としたオリジナル洗面化粧台「AQUA」と、“日々の生活をしやすく(Day+Easy)”をコンセプトにした福祉施設向けの製品群「Daysy®」を軸に、誰もが快適に使いやすい製品を開発。設計から施工までワンストップで対応することでお客さまの抱えている課題と丁寧に向き合い、ソリューション性の高い提案を行なっています。
「エシカル水栓」とは?
インフィル独自の電気温水機能付き自動水栓「エシカル水栓」は、福祉施設の中でも特に特別養護老人ホームに向けた製品となります。製品価格はもちろん電気代も含めたトータルコストでの改善と飲用可能という機能面の両立を図った「エシカル」の名の通りの製品となっており、多くの施設で高い評価をいただいています。